ボツになった歌詞群に宝物は埋まっていないのか!?
その2
 

 先週、ボツになった歌詞を掲載して、それに適当なコメントをつけるという完全に間に合わせの企画、というよりも「最近三週間加藤君なんにもやってへんから今週こそはなんか書いてや!」という伊藤管理官による強制執行命令により窮余の一策として「まあもう時間もないしこの辺の歌詞でも載せとくか」と思い入れのない感じで企画を始めたら、掲載直後から掲示板にどんどん書き込みがあり、なんだか嬉しいようなそうでもないような複雑な気分です。掲示板への書き込みっていっても二件だけだけど。その辺もまた複雑だぜ。

 で、まあ、今週も引き続きこれでいくかとばかりにぼんやりと書き始めたのですが、ボツ曲なんてもうほんとに山ほどあって、どれ選んで良いのかわからん。そして、このコラムは果たしてなんらかの未来とつながっているのか。つながっていねえんじゃねえか、という疑念がまるで確信みたいに消せない。なんせ追い込まれてなんとか楽してコラムを一本稼ごうと思って立ち上がった企画だからなあ。そんな未来のことなんか考えてないねん。
  それにしてもこのHPはロボピッチャー以外のいろんな人や事象とつながるために毎週更新しようっていってたのに、完全に俺達(加藤&伊藤)だけで可能な企画ばかり考え出しているし、しかも最近じゃ過去ばっかり見てて一切未来への展望が見えてこない。頼むからだれかしかってください。はやく次のアルバムを作り出せ!とかいってください。いつまでもぬるま湯につかれるタイプの男が二人でしこしこと毎週更新してたらそりゃこんなふうになっちまうよ。
  という、例によって陰鬱なスタートですが、今回の曲は結構名曲ですよ。僕はこの曲とても好きなのだけどなぜか世にでなかった。

「鼻毛の出てるピンクのゾウ」

へんなぼたんをまた押してしまったみたい
しっぽをひっぱたらすべて止まっちゃった

とかくこの世はまだ不思議なことばっかり
まゆげに羽が生えてパタパタ飛んで行くよ

始まらないままで終わってく どろどろに腐った物語
鼻の穴からピーナッツ  飛ばして馬鹿笑い

ピンクのゾウから鼻毛が出てたと深夜の3時に電話が鳴るので
壊れていくのが明らかな場所で踏みつけるものを探して泣いている

探し続けるならいつかぴったりの
長靴を見つけるさ 雨など怖くないよ
さらばサラバ友よ少し寂しいけど
雨をよけず歩く強い愚か者だ

うたかたの夢から覚めたなら 夢の続きでまたはしゃごうか
忘れたくないことがまだまだあふれてる

ピンクのゾウから鼻毛が出てたと深夜の3時に電話が鳴るので
壊れていくのが明らかな場所で踏みつけるものを探して泣いている

夜の向こう 朝の彼方 変な生き物ばかりの町で
踊り狂う 笑い明かす 明日雨なら濡れて笑おう
ああなにかが 生まれそうだ そしてもちろんなにかが死んで
踊り狂う 笑い明かす ピンクのゾウから鼻毛が出てるー

 じゃーん。どうでしょう。このエキセントリックな歌詞は。親の顔が見たいものです。

 これ創ったのはいつくらいだったかな。多分ロボピッチャーの最初期くらい。もしくはロボピッチャーが出来る少し前かも。この頃の僕の曲は単語が極彩色でまぶしいです。一つ一つの言葉に確信があって、それが結果として強い勢いになっている。人によっては偏狭なイメージで捉えられたかもしれない。別に最近だってそんなにユニバーサルデザインな歌詞を書いてるわけじゃないけれど。
  さて、この曲はもう時代が時代ならドラッグソングとして発売中止になりかねないほどの幻覚、幻影イメージのオンパレードです。しかもトリップとバッドトリップを行き来していてなんだか息苦しいです。もちろん僕はドラッグは合法も違法も経験したことはないけれど、これはかなり酔っ払って作って曲だと推察されます。まずはドラえもんを想起させるセンテンスから始まり、眉毛に羽が生えて飛んでいくカットインがあり、なんか物語もどろどろでピーナッツを鼻から飛ばしてやっとサビです。一行ごとのカロリーが高いですな。そしてサビで提示される「ピンクのゾウ」というイメージ。これってアル中やヤク中の人が幻覚として見ちゃうもののイメージとして、結構一般性があると思っていたのですが、親しい友人達に聞いてみたらだれも一切知りませんでした。僕が子供の頃には「お酒を飲みすぎた人はピンクのゾウを見る」という共通認識があったと思うんだけど、20年の月日の中でどうやら風化してしまったようです。今風に言うと都市伝説?で、そのアル中が見る映像を良く見てみると鼻毛が出てたっていう電話がかかってくるわけです。夜中の三時に。もうこんな電話がかかってきたらめちゃくちゃがっくりです。世の中の成り立ちに諦観の念をウォンチューですよ。夜中にたたき起こされてそんな話を聞かされて自我が軽く崩壊気味の中、壊れていくこの世界でなおも踏みつけられるものを探して泣いている20代男子の混沌を描いた名作です。
  これってすごい情景ですよ。ガンダムに例えると、爆発寸前のホワイトベースの中でさらに壊せるものを探してうろうろしているみたいな異常さですからね。またこの曲が結構キャッチーで元気な曲なんすよ。それが逆に薄ら寒いばかりの臨場感を生み出したからボツにしたっていうのは嘘で、おそらくその時期のロボピッチャーで演奏するには少し曲がPOP過ぎたんだと思う。結成当時のロボピッチャーはPOPであることを一生懸命否定しようとしていたPOPバンドだったし、それは1つのバンドがオリジナリティーを得る為の過程であったようにも思う。その時にこの曲はなんだか迎合して写ったのかもしれません、というのはまあ半分は本当だけど、本当のボツの理由はバンドとしてのアレンジが思いつかなかったから。バンドでやった方が弾き語りよりも圧倒的にかっこいいぜ!っていうアレンジがどかーんと出てこなかったからボツにしました。今やったらもっと面白く出来るかもしれないけれど。
  しかし、この曲の歌詞は好きな部分がいっぱいある。
  今僕の周りには「雨をよけず歩く強い愚か者」がいっぱいいてそいつらはみんな出口のないぬかるみに向かって行進しているんだけど、その行進がなんだか陽気なのです。それは歌と笑いに満ちていて、「うおーこれはこれで正解なのだー!」と叫びだしたくなる衝動がロックで青春群像なのです。制作時にはそんなこと考えてなかったと思うけど、これは今僕がいるシーン、僕を囲んでいる人たちを表した曲なんじゃないかなあと思ったりもしました。
「うたかたの夢から」は何回も「覚め」ちゃったけど「夢の続きでまたはしゃ」いでいるすべての人に捧げる、僕なりの応援歌ですというのは嘘で、もちろん酔っ払った勢いで作った電波ソングです。でも時々真実を捉えることもあるからなあ電波は。
  また今度練習してソロとかでやってみます。

 それでは。また来週。

 加藤隆生




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