みなさんご機嫌いかがですか?ロボピッチャーホームページヘルパーの葉です。
最近ロボピッチャーの過去の対談を読みかえして、「対談まとめる係」っていう素敵な呼称があることに気がつきました。素敵な響きです。「黒板消す係」とか「花瓶の水とりかえる係」みたい。そんなわけで「対談まとめる係」の葉です。あとレコ発で歌詞カードを配る係もしました。ライブに来て受け取ってくださったみなさま、とてもありがとうございます。
そんな7月6日レコ発ライブのなんと直前、開場2時間前くらいに新しい対談がとりおこなわれました!なぜか私が緊張しました。
今回はロボピッチャーの音作りを支えるおふたり、キーボード/プログラミングの伊藤さんとドラムス森さんのスペシャル対談です。レアかも!
1.ロボピッチャーの音づくりとは
はい、対談はじまりました。
たぶん、iTunesのダウンロードはもう皆さんわかったと思うので。
うん。
もう皆さんバリバリ聴いてらっしゃると思います。
ダウンロードがまだの方は前の対談を見てくださいね。
あれはでもめっちゃええと思うよ。iTunesのダウンロードに悩んでいるご婦人とか絶対いるから、そのまま何かに流用できるんじゃないかと思う。
ははは。
ああいうマニュアル本を求めている人は絶対いるよ、ロボピッチャーのファンじゃなくても。全国に絶対いると思う。
まあそのへん、表向きの話はもう加藤くんとしたわけですよ。買ってくださいよーとかこうしたら買えますとか。でもどうやってこの作品が出来たかとかそういう部分にはあまりスポットが当たることがなかった。
そうですね。とにかく、ロボピッチャーの曲を最初に作るのは加藤さんですよね。それをそこから、誰がどうやって楽曲になるのか、という過程は知りたいです。レコーディングのレポートにうかがった時に、仮歌にもうなっていたじゃないですか。でもまだそこに至るまでに、どういうふうになっているのか分からない。
難しいな。
うん。
あのね、ロボピッチャーは基本的に、すごい古風な昔っからあるバンドって要素と、機械を使って電気的にやろうとする要素が、同じだけあって。それは意外と珍しいことで、だいたいどっちかに寄ってるバンドが多いのね。でもロボピッチャーの場合は両方混ざってる。だから難しいね。
それは、曲によって違ったりもするんですか?
曲によってどっちかの要素が強くなることもあるね。極端にどっちかに寄ることもあったりして。
けっしてどの曲もおなじように作られているわけではないってことなんですね。
うん。プロセスとしてはもう本当に様々。
ただ、絶対にやるのは、バンドの演奏のリハーサル。それを普通にやって。で、家に持ち帰って電気的な仕込み。それを行ったり来たりしなあかんのがうちのバンドの宿命というか、特徴というか・・・
その仕込みは、基本的に担当されるのは・・・?
うん、まあ伊藤くんがプログラミングをして、自分のパートも考えながら、機械で作った素材をどんどん構築していく、っていうやり方なんやけど。それをまたこっちにもらって、僕がミキシングして、またそこからアイディアが出たりもして、そういうのをシームレスにやってるって感じやね。
メンバーさんの間を曲が行ったり来たりしてるんですね。
うん。この話、なかなか難しいでしょ?
難しいですね。
2.みなさんがいったい何をしてるのか
まず完成形をイメージできるように4人で演奏しながら考えて・・・あとはどんどん曲をやりとりしながら、また僕のとこに持って来て、プログラミングとかをして、またバンドのとこへ持って行って。まあいろんなやりとりをしながら、だんだんアレンジが練られていくっていう・・・。要は、アレンジを練るっていうところにかなり重点を置いてて。その時点で仮の状態のままの歌詞もまだけっこう残ってるんやけど、アレンジされて曲の全体が見えてくることで、それに影響を受けて歌詞が出来ていったりとか変ってきたりとかもする。
だからわりとサウンド主義っていうか、サウンド志向って感じやな。まあ加藤くんはギターじゃーんって弾いて、わーっと歌って、「やっといてー」みたいな。「もうまかしたー」って。あっという間に終わるんやけど。
あはは。なるほど。
それを受けた伊藤くんとか、レコーディングにかかるまでが大変やな。そこからがもう莫大な時間が。
なんとなく、その感じはわからなくもないです。
で何時間もかけて作って持って行ったらあっさりボツやったりしてね。
そうそう(笑)。
そういうときは、素直にやりなおしですか?
うん、やりなおしやね。でもここはこうなんだ!っていうのがあったら通すし、こうじゃないって言われて確かにそうだなって思ったら検討するし。
じゃあ基本的には話し合いですね。
うん。アレンジにおいてはそういうやり取りはきっちりやってるかな。
・・・なるほど。だんだん、やりとりの重ね合いで曲が分厚くなっていくんですね。
うんうん。そう、分厚くなっていきます。最初はラフスケッチみたいなものがあって、それがオッケーなら肉付けしていく。みんなの演奏もちょっとづつ肉付けされていくし、歌詞もメロディーも、肉付けされていく。全体がちょっとづつ完成形に向かって進んでいく。
いちばん最初のそのラフを描くのが加藤さんだとしても、やっぱりそれをロボピッチャー全員で色付けしていく、って感じなんですね。
そうやな。
そうそう、まあ、ラフっていうか、ほんとにギター弾いて曲作って、っていうところまでが加藤くんの役目で。そこから、加藤君のヴィジョンがすごく強い曲なんかはそれに基づいて作って行くし。そういうのが特にない時はもうなんか「まかせるわ!」とか言われて、こっちの独断でやっちゃったりとか(笑)
そんなこと言われるんですね(笑)。じゃあ、曲によっては、決して加藤さんのイメージでできてるというわけではなくて・・・
むしろ、加藤くんのぜんぜん想像してなかったところに行っちゃうってこともけっこうあるよ。
じゃあ、そこはもう色付けは、別の方のイメージが入ってたりってことがあるってことですね。
うん、メンバー個人の世界観が濃く出るってこともあるし、僕がもうほとんどやってしまうような・・・「卓球makes me high!」みたいなやつもあるし。
ああー、あの曲はじゃあほとんど伊藤さんなんですね。
「紺碧の歌」とかは、イメージはあったけど基本の形は崇さんが作ってくれてたりしてね。覚えてます?
そうなんですね!けっこう意外なお話です。
ああ、そうかそうか。忘れてた。
崇さんのイメージしてきたところの、最初のあの太鼓の音がどーんと鳴っている感じが、全体をすごい支配してて。僕あの曲だけは全然最初見えてなかったんだけど、でもそのデモを聴いて、ああわかった!もうわかった!ってなって。じゃあオーケストラっぽいアレンジをしてきます!っていってホーンセクションとか作ってきて。そうやってまた曲がだんだん組み上げられていくんですね。
じゃあ最初からああいうイメージではなかったんですね!
まあ、加藤くんのギターと歌があった、っていうだけかな。そこにどうしてほしい?みたいなことは言ってたかな?
うーん、まあ、わりと加藤くんは、いい意味で素人注文をするんやんか。僕らが専門的な技術で作ったものに対して、なんか全然どうなってるかは分らんけどこうちゃう?って感覚的に言うのがけっこう当たってることが多いから、そのヴィジョンは大事にしてる。
技術的なことに対して、加藤さんは感覚的に指示を出してきはると。
うん。そこはいいコミュニケーションやなーと思う。けど、伊藤くんがこれまた持って帰ってやらなあかんやん、あーかわいそうーみたいなね(笑)
ははは。結局ね。
一言で、何十時間の努力がー・・・みたいなことはあるけど。
またそのディレクションが感覚的なんで、この一言をサウンドにせなあかん、うわあー(笑)で、もうこの手は使えないから、ちがうやり方で・・・ああー(笑)みたいな。
3.ゲストだって呼んじゃいます
それで今回、実はバイオリンのゲストが入られてたんですね。
そう、僕たち4人の中で出来なくてほかの楽器がほしいなーっていうときはゲストの人にやってもらうっていうことがあります。
今までもホーンセクションがあったりとか、あとノコギリが実は入ってたりね。はじめにきよしのサキタくん。
「チンパンジー」ね。
豪華なゲストが登場していて。
けっこう、出来る範囲のことは僕たちでがんばってやったりするんですけどね。サックス的なやつとか。ありちゃんがバイオリンを弾いたりとか。でも、さらにもっと専門的な人に弾いてもらった方が雰囲気が出る、みたいな曲は、ゲストにお願いします。今回は「ロマンチック探偵」でバイオリニストの松尾依里佳さんに参加していただきました。
はい。その、この曲のバイオリンはゲストの人にやってもらおうよ、っていうのはどの段階で決まるんですか?
わりと早期に決まることが多いんじゃないかな。はじめのうちに、たとえば加藤くんの中にホーンが鳴ってたり、この曲はバイオリンだ!ってわりと最初から言ってて、それで誰かいないかな、って探したり、こんな人がいるよ、って呼んできたりして。
そのへん、出来ることと出来ないことの判断が出た時にすぐ、じゃあゲスト決めよう、って話になることが多いかな。
だからわりと早期に決まることが多いよね。
わりと曲の骨格段階で、ここは専門家の人に任せましょう、って決まってたりするんですね。
うんうん。
じゃあゲストの人が担当されたパートについては、最初のあたりから織り込み済みになってたりするんですかね。
うん、あるていどラフを作って、こんなイメージなんですって渡して、あとはけっこうゲストの自由にやってもらうことが多いですね。細かいとこはあるていど言うけど・・・
自由っていうか、もう何でも弾いてーとか言って逆に困られてるよ(笑)えーもうちょっと何か言ったげないとー!みたいな。
おまかせですか(笑)
こないだ松尾さんに来てもらった時も、加藤くんが「何でもいいからやってよ」って言って、松尾さん困ってて。
ははは。
何でもいいからっていわれても(笑)
ありちゃんがバイオリン弾けるから、そんな言い方ではバイオリニストの人は困るよ!って慌てて譜面を作って、資料とかも全然用意してなくて・・・めっちゃありちゃんが困ってた。
「ロマンチック探偵」に関してはもともと加藤くんが加藤隆生プラスっていうユニットでこの曲をやってて、その時すでにメンバーとして松尾依里佳さんがバイオリンを弾いてて。そのラインが全体を支配してたので、もうこの曲をやるって決めた時点から松尾さんのバイオリンは決定していた。
じゃあもうほとんど最初からですね。
うん。そういう意味ではすごく楽で、イメージも全部できてたから、あとはもう来て弾いてもらうだけっていう。もちろんそのユニットの時とアレンジとか音の厚さとか、若干の違いはあったけど。
松尾さんもちょうどアルバムが出ますので。
そうそう、7月10日発売ということで。
がっつり僕がドラムを叩いてエンジニアやってるんで、聴いてください。
あっ、そうなんですか!
今度京都会館でコンサートがあって、その時も出るんで。「いきなり京都会館」っていうライブ。
いいなあ。ロボピッチャーも「いきなり東京ドーム」ってやろう(笑)
そんなわけなのでぜひ松尾さんのことも応援してください。
次回以降の配信でもまた松尾さんのバイオリンが聴けるかもしれません。ほかの曲にも参加してもらっておりますので!
4.エンジニア森さんのおしごと
で、そうやって録音が終わって、いよいよミックスダウンです。ミックスダウンっていうのは全部をフォローして、最後まとめる、って作業。全部の音が整って、録音が全部終わって・・・
要素が全部揃ったうえで、ミックスダウンをする、ということですか。
うん、全部の音を並べて、それぞれの楽器の音量バランスとかを調整して・・・そこのさじ加減一つで最終的な見せ方が全然変わっちゃうという、実はものすごく大事な。特にロボピッチャーはここでもまたそうとう時間をかけていくので。すごい重要な作業です。
時間的に言ったら1曲につきどのくらいかけるものなんですか?
でも実はここからは全部俺ひとりの作業なんで。
・・・そうなんですか?
うん。今回も完全に俺ひとり。あるていど出来上がったらみんなに聴いてもらって、これでどう?つって。
それで意見が帰ってきて、また森さんひとりで、ですか。
うん。でも今回はめちゃ早かった。いままでのアルバムはむちゃくちゃ時間かかった。もうね、朝から夜中・・・いや、朝から朝までやって(笑)
朝から朝まで!?
ふふふ。
うん。っていうのを毎日、1週間も2週間もやってた。
うわー。
ほんまにやってた。でも今回は、あんまりきっちりせんとこうと思って。すごい上手い演奏に聞かせたりするんじゃなくて、ダメなところとか自分達のイケてへんところを出来るだけ正直に出さなあかんなと思って、時間をわざとかけなかった。ありのままを出そうと。
いくらでも凝れちゃうからね。それがいい方向に行くとは限らないってこともあるから。
キレイに整えたからといっていい曲になるとは限らないんですね・・・
うん。この段階で歌の音程とかもガンガンいまどきは直せるんやけど、それをしたら果たして良くなるかって言ったら、歌のすごく感情的な部分が消えちゃったりとか、ピッチがずれてるから生々しさが出るところもあるし、そのさじ加減が本当に難しい。けど今回は、そういうのをざっくりとしたことで、逆にラフめのカッコ良さが出たと思う。
ロマンチック探偵はかなりバンドっぽいんじゃないかな?他のいろんな人の楽曲と比べても、あれだけ荒れてるものはあまりないんじゃないかって気がするな。
ロマンチック探偵がわりと生々しいな、っていうのは私も聴いてて感じたんですけれど、今回すごく好対照で、逆に「パンダーマン」って聴いた感じデジタルっぽいですよね。
うん、めちゃめちゃデジタルっぽい。
ですよね。そこはやっぱり、意識して?
まったくその通りです。だからミックスに関しても、対照的なミックスになってる。パンダーマンの方は、伊藤くんのフィルターというか伊藤くんの音の処理がすごく反映されてるから、それをもらって、どれだけ強調するか。・・・電気的にバサッと切られた感じとか、無駄がなくてストイックでシンプルな感じとかをどれだけ出せるか。
そういう点に重点を置かれたんですね。
そう。逆にロマンチック探偵はどれだけグチャグチャにするか。わけのわからん余分なものも変なものもあかんものもいっぱいいろんなものが入ってる。パンダーマンの方はほんとにその逆。
整理整頓されて・・・
どんどん加工をしていってる。伊藤くんのデータからそういうのを受けてやってるから、わりとこの2人のコミュニケーションが反映されてるよね。
うん。
じゃあ、わりあい曲の製作の最終段階っていうのはこの森さんと伊藤さんのやりとりが大きいんですね。
やっぱりそうやな。最終的には2人の作業っていうのが多い。そうして80%、90%までもっていく、そんな感じです。
うん。・・・まあだからサウンドチームみたいなもんです。この2人は。
まさにそうですね。
まあ、それで出来上がりです(笑)。いよいよ完成。
うん、それで、今回好対照なこの2曲が出来上がったというわけです。
前編はロボピッチャーの曲が出来るまで、ちょっと技術的なウラのお話でした。外側からではなかなかうかがい知れない工程のお話は興味深いです。・・・そっか。ロボピッチャーの音楽って夕陽の魔法で作るわけじゃないんですね。
音作りについて語る伊藤さんと森さんはさすが、プロの香りがしました。この点についてはもう妥協なし!って感じですごくカッコいいおふたりなのです。
しかし、後編はもうちょっとぶっちゃけたお話がいろいろ聞けると思います。もうちょっと・・・えーと、だいぶん。どうぞ次回をお楽しみに!
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